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2022.08.10
左官は一括施工の時代!~床会理事が見据える、左官業の未来~
古くからの伝統や慣習が根強く残る「左官」という仕事。
モノリスコーポレーションは、左官業の新たなスタイルを確立しつつあります。
「伝統に胡座をかいているだけでは、時代で変化するニーズは満たせない」
という考えの元に、お客様が求める品質、そして業界の課題に日々挑戦し続けるのです。
左官・土間工法の機械化、新工法のNETIS認定、施工精度を高めるマシンの開発。
その指揮を執るのは…
モノリスコーポレーションの代表取締役であり、
日本床施工技術研究協議会の理事を務める亀井。
20年を超える土間工事会社での番頭・営業経験。そこで培ったノウハウをフルに活かし、時代と共に変化するエンドユーザーの希望を、土間工事の現場に反映させる。
技術研究を共に担うのは…
モノリスコーポレーションの取締役であり、左官歴37年の仲松。
特許を取得した、再振動機能付き液体散布機「メクレーン」の生みの親である。熟練の職人であり、柔軟な思考で現場の課題を技術で解決に導く。
この2名の
エンドユーザー視点 × 職人視点の融合が、次々と左官業界の常識の壁をぶち破っていくのです。
この記事では、代表取締役の亀井の考える「これからの左官業」を掘り下げていきます。
亀井 昭利
事業の企画・建設・運営・営業といった多岐に渡る分野でマルチプレイヤーとして活躍。
当時からゼネコンの仕事を前にものづくりの面白さに魅了される。
同社が保有するリゾート地のゴルフ場支配人を務めた後、来客を待つサービス業ではなく、能動的に自ら市場を攻める仕事を求めて転職。
23年前に「番頭」というポジションでコンクリート業界に足を踏み入れた。
左官・土間工事の実態を知り、「職種の垣根を超え、新しい価値を生み出す会社を創りたい」という想いからモノリスコーポレーションを創設。
日本床施工技術研究協議会には約10年列席、現在は理事を務める。
「俺のやり方が一番」まとまらない土間業界の特殊な背景
亀井:土間屋というのはかなり独特な世界です。他の業種の人からしたら驚くような習慣が沢山残っています。働き方も、単価も。
私の場合は建築の右も左もわからない頃から土間屋に入り、始めから「何かがおかしい」という違和感がありました。
番頭として朝早く現場に向かっても職人は来ないし、朝礼には出てこない。
左官屋には過剰に気を使って。
当初はそれがなぜなのか分かりませんでしたが、徐々に「これは左官屋の下で大人しくしておいた方がいいな」とその関係性が掴めてきました。
土間工の職人が少々変わっていることも、土間屋が置かれている境遇を知れば合点がいきました。労働環境や単価が他職者の水準とは全く違うんですよ。
土間は一度コンクリートをうち始めたら、その日のうちに完成まで仕上げなきゃいけない。仕上がるまでが仕事だから17時18時には終わらないんです。夜中まで掛かることもざらなのに、それにも関わらずその仕事に対する対価は非常に低い。
どうにか改善しようとしても、当の本人たちが「俺はできるからいいよ」「安いなら人を減らせばいい」と。それなりに単価の良い現場がきても「人数減らしたほうが儲かる」と、そういう考え方なんです。
そんな境遇だから自分たちでルールは作ってしまうし、まとまらない。
まとまらないということは、組織が作りづらい。組合なんて絶対に作れませんよ。
そんな状況で、川村工業は当時取引先だったのですが、ビジネスのやり方には深く共感していました。
「俺のルールは俺が決める」というスタンスに変わりはありませんが(笑)、
自分でルールを作って、自分で単価も決めて、自分たちの品質を保ち、それを自分たちで売り込む。
それをお客さんが良いと思ってくれれば、最高のビジネスじゃないかと。一民間企業が突出して強くなれば、それが一番早い。
まぁそんなことをしていれば、昔ながらに根付いたスタイルを否定することもあるわけで、同業者からは「厄介な嫌われ者」になります。
ただ、それ(川村工業の仕事のスタンス)が間違っていたなら、会社は残っていないんですよね。
ある時川村さんから「土間を始めたい」と声を掛けられ、私もここでなら自分が正しいと思う方法でサービスを作れるかもしれないと、モノリスコーポレーションを設立しました。
現に弊社では、接待などは一切せずに、品質で勝負する正攻法だけでここまでやってきました。
本当の意味での総合ソリューションとは?
■土間工事は躯体業者でありながら、仕上げ業者でもある。
左官というのは仕上げ業者ですが、土間は躯体業者です。
躯体業者というと鳶・土工、鉄筋や大工。その中で土間はちょっと特殊で、作ったものが最後まで残ります。躯体業者でありながら、仕上げでもある「見える仕事」なんです。
だからそこにチャンスがある。
結果が見える仕事は、エンドユーザーから直接評価をいただけるので、しがらみや周囲からの圧力を崩せる可能性がある。自社でサービスを確立すれば、エンドユーザー直で仕事を受注することもできる。
それが如実に表れるのが物流倉庫の床だったのです。
■職人の積み重ねた技術に「ビジネスの観点」を
職人は自分のやり方がベストだと思っています。毎日試行錯誤して、ちょっとずつの積み重ねで技術を高めているのが職人。
それ故プロは自分のタイミング・やり方がベストだと思っています。
しかし、私のような営業の立場からすると素直にそれが良いとは言えません。
「○○さんや△△さんが来てくれたらキレイに仕上がるんだけど、□□さんが来ると上手くいかない」と言われてしまうからです。
特に大型倉庫の床などは、「ココだけがキレイ」ではダメなんです。仕上がりが市松模様のようにバラバラでは商品として成り立ちませんし、お客さんからしてみれば、なぜ同じ施工会社を呼ばなかったんだ!となってしまう。
俺のやり方がベストだ!というのが自己満足ならそれは独りよがりで、ビジネスはお金を出す人が何を求めているか、それにどう近づけるかを創意工夫で考えるから結果がついてくる。
極端に言えばどんな過酷な状況で、どんなトラブルがあっても、お客さんにとっては関係のない話。
多少のブレはあっても、誰が施工しても同じ品質で提供しなければ評価は得られません。
■言い逃れがまかり通ってしまう土間業界の背景
私は土間業界の最も大きな問題は、「自分が1番」と言いながら、上手くいかなかった時に「あれは仕方がない」「コンクリートが悪い」「元請けが悪い」などと色々なものに逃げてしまうその体質にあると思っています。
グループ会社の川村工業は元々が左官屋ですから、まさにそういった現場に幾度となく収拾をつけてきたわけです。だから発注主の気持ちが痛いほどよく分かる。
今までの土間屋には「コンクリート仕上げの総合ソリューション」という企業はなかったんです。総合ソリューションとは、様々な問題や課題をいかに解決するか。それが本当の意味でのソリューションではないでしょうか。
床会の理事になったのも、原点はその個々にバラバラな工法を統一したいということでした。
工法を編み出す立場にある学者の方々は現場を見ずに、参照する資料は30年前の古い論文ばかり。
本来であれば発言力のある学者さんが「土間工事は○○を用いるべし!」と鶴の一声をかけるべきところですが、何十年も前の定義を用いて議論しあっているため、なかなか話が進みません。
議論することも、一昔前の「理論」と現場の「今」が合致しないことは明白でした。
さらに、建設現場の主流が分離発注であることも問題を深刻化させています。
これは建設業界全体の構造が影響しているため簡単に変えられるものではありませんが、分離発注は責任の所在が不明瞭になりやすく言い逃れもしやすい。
その一方で、今は瑕疵担保責任を非常にシビアに指摘されます。納品後5年位は自分が作ったものは責任を持って直してくださいと。矛盾していますよね。
コンクリートで言うなら、生コンの製造、打設、仕上げ、掃除、研磨と、全て分業。そうなると、全員が無責任になってしまう。「これは自分の仕事のせいではない」と。
どんな状況でも、求めるものを提供するのがプロであるはずです。
その解決策がKL工法であり、一括施工です。
左官・土間の「一括施工」が、作り手のやり甲斐を生み出す
■仕上がり後までお客様と関われる喜び
NETIS認定を得た「KL工法」は、土間施工の工法を統一するための手順書です。
生コンは環境や気候によって扱いが非常に難しい材料ですが、それでも外的環境に左右されずある程度均一な精度と品質で仕上げられる一つの基準とも言えます。
ここに至るまでにも色々な試行錯誤がありました。
プラ鏝の開発や再振動の導入、メクレーンの特許取得。いくら呼びかけても理解を得るまでなかなかに時間は要しましたが、技術を開発し、信念を貫いてきたことで、やっと国にも認めてもらえるようになってきました。
手順が決まっていれば、みんなが同じ方向を向けます。
また道具があれば、もし不具合が発生してもゴールは整えられます。
また、一括施工なら責任の範囲も明確で、ゼネコン側の管理コストも抑制できます。
言葉では「一括施工」と簡単に言えてしまいますが、コンクリートを100回120回打って床を造る、その精神力は並大抵ではないんですよ。
しかし、不具合があれば自分たちの手で直して、またそのノウハウが積み重なっていく。
定期的な点検時も一緒に確認してほしいと、エンドユーザーのお客様から呼んでいただき経過も見れるしダイレクトに評価をもらえる。
それは働く側にとっての生き甲斐や、やり甲斐になっていくのではないかと思います。
一般的に土間工事会社は、納品後のお客さんとの関係はなくなってしまうものです。
そうではなく、使う側が何を感じているかを知る。それが次のヒントになる。
「ちょっと滑りますね」「床からの冷気が少し冷たいです」など色々な意見があって、「こうした方がいいのかな」と考えるきっかけを貰える。
3~5年後の変化を見るのも楽しみですし、KL工法というのは3年・5年と使い込んでいくと石貼りしたような床になっていきます。使えば使うほど良くなっていく工法でもあるのです。
掃除もサッと掃くだけでいいし、剥がれることもない、塗る必要もない。メンテナンスがほぼ要らないんです。お客さんにとっては一番経済的で、メリットはかなり大きいと思っています。
■多くの人が勘違いしている「土間工事の一括施工」
残念なことに、モノリスコーポレーションが提唱する一括施工は、まだまだ左官・土間業界の誤解を解消しきれていません。
営業に行けば「自分たちの仕事を取られる!」と煙たがられています。(笑)
ですが、私たちが手掛けようとしている仕事は、実は左官・土間の全体シェアの内、たった3~5%しかない市場です。マンションや商業施設ではなく、私たちのターゲットは物流倉庫などの左官の仕事が見える素地仕上げの現場なのです。
お客様・ゼネコン・施工会社・職人の全員にメリットがあり、win-winの関係を築ける素晴らしい仕組みを、他の土間工事会社と共有し、業界全体に広げていくことが目下の急務であると考えています。
未来を変える!床会理事の亀井の役目
床会にも、新しい風を取り入れたいのです。
先述しましたが、気候がこれだけ温暖化で変わっているのに、いつまでも工法が変わらないのはおかしいですよね。
ただこれにも、きちんと原因があります。
今までの床会は、学者の方々が現場との繋がりを持てていませんでした。
現場で何が起きているのか、知る手段がなかった。教授は発言力はあるものの、実施工に携わっていないから現場の人間からしてみれば重みがない。
私は、まさしくここに、床会の理事として最も貢献できることがあると思っています。
現場の最前線の情報を、学会の方々に届ける、「現場」と「学問」を結びつける役割です。
以前、私の呼びかけで床会の教授と、そこで学ぶ大学生を集めて、朝7時~夜12時までコンクリートが仕上がるまで一日がかりの現場見学を行いました。
見学に来られた学生さんは「コンクリートってすごい!」と、初めて生で実感していたようでした。
我々がそこ(床会)にいなければそうした機会を提供できないし、現場で起きていることを体感してもらうことも叶いません。
自分たちがどんなに叫ぶよりも、偉い教授が「これはこうだ!」と言う方が響くのですから。私が学会の方々にヒントを届ける役割を担えたら、以前は諦めかけていた「業界を良くしていく」というのも夢ではないのかなと希望を抱いています。
KL工法の普及や指導は、KMC(カワムラマシーナリークラブ)で行っています。
自社にも取り入れたいというお問い合わせは歓迎です。
KL工法、メクレーンポリッシュ工法、その他工法についてもご興味をいただきましたら、下記よりお気軽にお問い合わせください!